医学部受験において、合格の可能性を広げ、学費の負担を大きく減らしてくれる「地域枠」。
高3の秋、模試の結果が五分五分だった我が家にとっても、とても現実的で魅力的な選択肢でした。
実際、ネットの情報を集め、資料を印刷し、親子で話し合いました。
その上で出した結論が、「地域枠を選ばない」という判断でした。
喉から手が出るほど欲しい「現役合格」と「学費軽減」。
それでも私たちが一般枠を選んだ理由は、15年という時間の重さをどうしても軽く考えられなかったからです。
1.「6年+9年=15年」という時間の重み
地域枠の大きな条件は、卒業後9年間、指定された医療機関で働くこと。
医学部6年間と合わせると、合計15年になります。
18歳から33歳まで。
人生の中でも、価値観が変わり、選択肢が広がっていく時期です。
医師という仕事は専門性が高く、
学びを深める中で「思っていたのと違う」と感じたり、
別の分野に強い関心を持ったりする可能性もあります。
そのとき、18歳の時に結んだ契約が大きな制約になる。
そのリスクを、まだ人生を始めたばかりの子どもに背負わせていいのか。
私たちは、そこに強い迷いを感じました。
2.まだ見ぬ将来への「小さくない制約」
話し合いの中で、子どもが口にしたのは「将来の家族」の話でした。
「地域枠があることで、結婚相手に迷惑をかけるかもしれない。
まだ何も決まっていないけど、そういう制約が最初からあるのは不安だ」
僻地勤務そのものよりも、
将来大切な人ができたとき、その人の人生にも影響が及ぶ可能性を気にしていたのだと思います。
同じ県内であっても、勤務地や期間を自分で選べない。
その自由度の低さが、これから始まる人生には少し重く感じられました。
3.「学費のために選ばなくていい」親の気持ち
学費免除や手厚い奨学金がありがたい制度であることは、間違いありません。
それでも私たちは、「お金を理由に進路を決めてほしくない」と思いました。
「国立なら、学費は何とかする。
そのために今まで準備してきたんだから、
お金の心配で選択肢を狭めなくていい」
そう伝えたことで、子どもは金銭的なプレッシャーから離れ、
地域枠を選ばないという判断を、落ち着いて考えることができたように思います。
4.制度は「覚悟」があってこそ成り立つ
地域枠は、本来とても大切な制度です。
地域医療を支えたいという強い思いがあってこそ、長い義務年限も意味を持ちます。
「合格しやすそうだから」
「学費が安くなるから」
それだけを理由に選ぶと、
9年という時間の中で、気持ちが追いつかなくなる可能性もあります。
覚悟がないまま制度に縛られることは、
本人にとっても、地域にとっても、決して幸せな結果にはならない。
私たちは、そう考えました。
最後に:これは「我が家の選択」です
地域枠という選択肢を手放し、一般枠一本に絞ったことで、
親子ともに気持ちがすっと整理されました。
「合格」はゴールではなく、医師としての人生のスタート。
医学部を卒業した我が子が、自分の意思で進路を選び、
納得してその場所に立っていてほしい。
その自由を大切にした結果が、私たちの選択でした。
なお、地域枠を選ぶご家庭や学生さんを否定する気持ちは全くありません。
使命感を持って地域医療に進む方々がいるからこそ、この制度は成り立っています。
進路の正解は一つではなく、何を大切にするかで選択は変わる。
これは、あくまで我が家が出した一つの答えです。



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